たとえ偽りに終わったとしても

趣味のこと書いてます。詩の投稿掲示板サイト代表のブログでしたが。

赤い川

完全なるものが鬱陶しい
語られるほどに
無能な川底を回る魚のようで

湧き水を汲みに行った先
おねえちゃんがいう
「完全なるものは三千世界といってね」

「完全なるものは死なないんだね」
と意地悪に返した
髪が抜けて鬘をしたおねえちゃんは
顔すら動かせなかった
うわごとをしゃべるようになった
つたうきみの世は
三千世界でしょう

会いたくない僕を
呼んでくれと
正気な時の頼みごとを
人伝にきくと面会に行く
死ぬのはこわくないよと
そう云われたら泣いた

もういちど湧き水を汲みにいこうかと
おねえちゃんを連れて出た
新興宗教の施設みたいで
寝心地が気になる宿
久しぶりにふたりで寝た
目が醒めたら
天井をみたままの姉が
死ぬのはこわくないよと
また云った

ひとりで部屋を出た
夜が明けだしの外の林道
見下ろせば
赤い川の水面
さきにいった父と母の
生死をおもったら
おねえちゃん、一緒に帰ろうって

つたうきみの世は
三千世界でしょう
おねえちゃん、けしうはあらず